【仮想通貨で歴史を学ぶ】南北朝時代その③:観応の擾乱とBCHのハッシュ戦争
その②はこちら
目次
婆娑羅(バサラ)大名とSCAM(詐欺)コイン
北朝方では、公家や天皇といった名ばかりの時の権威を軽んじて嘲笑・反撥する「バサラ大名」と呼ばれる人物が現れる。
傍若無人な振舞いの数々とは「上皇の乗っている牛車に弓を引いたり、公家の娘をかどわかしたり、御所に咲く紅葉がキレイな枝を勝手に折って持ち帰る」などで北朝方でも特に戦功が際立っていた武将:高師直、佐々木道誉、土岐頼遠などの名が挙がる。
このような振舞いには、同じ北朝陣営内でも目をしかめる声があがりその後の北朝内の不協和音に繋がっていく。
仮想通貨の価格が上昇していたころに、仮想通貨を作成し、法律のグレーゾーンを縫ってMLM(マルチ商法)や詐欺目的で販売する「SCAMコイン」と呼ばれる仮想通貨が横行していた。
イーサリアムと類似のスマートコントラクト機能を取り入れた銘柄も少なくなく、かつて詐欺と見なされていたADA(カルダノ)などは、MLM形式で会員にプレセール販売して資金が潤沢になったこともあり時価総額が仮想通貨ランキング上位となるなど成功例もある。
しかしこのようなコインの煽り行為をして売り逃げするようなスタイルに嫌悪感を抱く仮想通貨ファンは多い。
↓SCAM(詐欺)確定または、疑惑がつきまとっていた仮想通貨の代表例
北朝:足利内部の抗争とBCHチームの抗争
北朝陣営は、各地で南朝方の有力武将:新田義貞、北畠顕家、楠木正行などを打ち破り戦局を有利に展開させ幕政の整備を強化する。
足利尊氏は政務を弟:足利直義に任せる2頭体制を取ることにした。
直義は三条殿と呼ばれ秩序を守る政治を理想とした。
バサラ大名でもある足利家執事の高師直は、新しい秩序を創造していくことを理想としていた。
古い秩序維持:直義派と新しい秩序創造:師直派の2つの派閥が出来上がり北朝内部で骨肉の争いが勃発するのであった。
2018年5月にビットコインキャッシュ(BCH)は、取引の処理スピードが向上するためのブロックサイズを8MB→32MBまで拡張させるハードフォークを実施させた。
BCHには複数の開発チームが存在するが中でも「ABC」と「SV(Satoshi Vision)」という2つのチームが開発を主導していた。
最大派閥「ABC」チームにはマイニング事業で成功を収めたジハン・ウー氏やロジャー・バー氏がいます。
「ABC」チームは、BCHコミュニティ内で議論を重ねた上でビジネス寄りの機能改善を提唱しソフトウェアのアップデートを発表します。
このアップデートには「スマートコントラクトの実装(WHC)」と「クロスチェーンの実装(DSV)」というイーサリアムのようなDAppsの運用が可能となる機能が搭載されていました。
WHC:BCHのブロックチェーン上でトークンを発行するシステム
DSV:BCHのブロックチェーンを送金以外の用途に利用できるシステム
これのコンセプトに異論を唱えたのが「SV」チームでした。
BCHとは、真のビットコインを継承すべくビットコインの問題点を解決してきた仮想通貨であり、スマートコントラクト機能などの有するべきではないという主張です。
「SV」チームには、BCH推進メンバーであり「ナカモトサトシ(ビットコインの生みの親)」を自称していたクレイグ・ライト氏がいるため、その発言力に重みがありました。
既存機能改善を目指すSV派と新たな機能追加を目指すABC派と2つの派閥が出来上がりBCHコミュニティ内で骨肉の争いが勃発するのであった。
骨肉の争い:観応の擾乱とハッシュ戦争
BCHは2大開発チーム「ABC」と「SV」の対立によってビットコインABCとビットコインSVの2つのBCHとして分裂することになりました。
通常分裂する仮想通貨は「リプレイプロテクション(分裂前のブロックチェーンとの識別)」の機能を備えることで、競合せず別の仮想通貨となります。
ところが、ビットコインABCとビットコインSVは、リプレイプロテクションを備えずに分裂をすることになりました。
いわゆる「ハッシュ戦争(Hash War)」です。
ハッシュ戦争とは、マイニングによる取引情報の処理速度(ハッシュレート)を競い、相手よりも先に取引情報を処理できる(チェーンを長くできる)側が勝利します。
2018年11月15日、ハッシュ戦争に勝利した側が、BCHのブロックチェーンを引き継ぐことになるという相手が死ぬまで終わらない不毛な戦いに突入してしまったのです。
1349年、高師直陣営が足利直義を政務から追い落とすためのクーデターを決行します。
足利直義は将軍(足利尊氏)御所に逃げ込みますが、高師直は構わずに御所を包囲し、足利直義を政務から外すよう要求をしました。
この事件がきっかけで足利直義陣営は失脚することになりました。
この頃、九州にいた足利直義の養子:直冬が決起します。
足利尊氏・高師直が直冬討伐のために京を起った隙に足利直義は、京から出奔します。
足利直義は敵対していた南朝側に降伏し、南朝の軍勢を引き連れて反撃に出ます。
戦況は足利直義優勢に進み、直義の政権復帰を条件に尊氏と直義の兄弟は和睦をすることになります。
和睦の直後、直義と対立していた高師直と師泰は暗殺されてしまいます。
BCHのハッシュ戦争は、11/15当初ABC優勢に進んでいました。(グラフの赤)
しかし11/16にはSVも徐々に盛り返していきます(グラフの桃色)
ただ、このハッシュ戦争は、利益度外視のハッシュレートを作成するだけでマイナー(発掘業者)に赤字を生み出すだけになるのではと危険視されました。
そしてBCHのハッシュ戦争に勝つために、両陣営に肩入れするマイナーがビットコイン(BTC)のハッシュパワーをハッシュ戦争に投入するという混戦模様の事態となりました。
これによりビットコインのハッシュパワーが低下したため、ビットコインの送金遅延も引き起こし価格の下落にもつながった。
以下 ビットコイン(BTC)のハッシュレート
執事の高師直を暗殺された足利尊氏は、足利直義と対立を深めるようになります。
骨肉の兄弟対立・観応の擾乱・第二章の始まりです!
今度は足利尊氏が南朝と手を組む動きをする。南朝方の後村上天皇を正統天皇と認めるという条件である意味北朝の降伏という形で講和が成立した(正平の一統 1351年)
一進一退の攻防の末、足利両陣営に一門同士での不毛な争いに厭戦気分が出始めていた。直義派の細川顕氏や畠山国清などが尊氏派に帰陣するようになる。
最終的に尊氏陣営が勝利をして骨肉の争い「観応の擾乱」は終結しました。
戦後、尊氏・直義兄弟は鎌倉の浄妙寺で会見を行う。
会見の場で、直義は尊氏に毒殺されたという説が有力だが「観応の擾乱 (中公新書)著:亀田俊和氏」ではその説は懐疑的と書いてある。
※詳しくは当本の174ページを読んでいただきたい。
結局ビットコインABCとSVのハッシュウォーは、一時的にSVが優勢になりましたが、再びABCが盛り返し一進一退の攻防を繰り返します。最終的にABCが有利な展開になりつつありました。
SV陣営のCoinGeek:カルビン・エアー氏が、不毛な争いを辞めるようBCHの名前に拘らないと妥協案を提唱する。
SV陣営の強硬派:クレイグ氏もこの提案を受け入れ11/27にSVがリプライプロテクションを実装し新たなハードフォークコイン:ビットコインSVとして分裂した。
ABCがBCHのブロックチェーンを引き継ぐことで「ハッシュ戦争」は終結しました。
足利直冬について
最後に、九州で暴れまわった足利直冬について説明しておく。
足利尊氏には嫡子:室町二代将軍となった足利義詮がいるが、直冬も尊氏の実の息子である。
しかし若き尊氏が越前局という出自の分からない女性の所へ忍び通って生ませた子であったため、幼少期に鎌倉:東勝寺に預けられていた。
直冬は寺の僧から見どころがあると見込まれ、足利直義の養子として迎えられることとなったが、尊氏は直冬との対面をしようとはしなかったという。
このような境遇から複雑な感情が直冬にはあったのであろう、観応の擾乱で養父:直義が苦境に陥った際には、実父:尊氏に反旗を翻し、尊氏軍を苦戦させた。
直義が死亡後、直冬は尊氏との直接対決直前に、兵を撤退させてしまい、その後の消息は不明である。
最後にビットコインキャッシュクラシック(BCC)という仮想通貨の説明をしておく。
これは、ABCとSVのハッシュ戦争真っ最中に登場した仮想通貨である。
不毛な「ハッシュ戦争」の行く末を危惧して、ビットコインキャッシュ(BCH)は原点回帰すべきだという議論が始まっていた。
ビットコインキャッシュがハードフォークした時点に戻って、無駄な機能をそぎ落として真のビットコインキャッシュとして改良を進めていくべきだというプロジェクトである。
下図の通り、ビットコインキャッシュ(BCH)からハードフォークしたものではなく、ビットコイン(BTC)から派生する仮想通貨である。
しかし、ビットコインキャッシュクラシック(BCC)は、BCHのハッシュ戦争が終結すると、仮想通貨の世界から消息が消えてしまったのであった。
南朝に降伏した足利尊氏であったが、再び北朝方に転じて南北朝の争乱は、その後40年継続する事になる。
室町三代将軍:義満の時代になって南北統一を果たすのであった。
長々とありがとうございました。
END